国鉄急行型気動車でお馴染みのキハ58系。

キハ58系の方向幕について一つ気になることがあります。

キハ58系といえば、シンプルな「急行」幕表示の姿がポピュラーでしょう。

国鉄時代のキハ58系の方向幕は、165・455系急行型電車と同様、「急行」のほか「準急」「快速」「普通」「臨時」など列車種別のみのコマを表示、行先表示はサボを使用するスタイルが一般的でした。 

ただし、一部例外があります。

それは天王寺鉄道管理局管内。

天鉄局管内の気動車は、キハ35系投入以降、キハ45系やキハ40系等の方向幕に行先を表示する方式が徹底。同局所属の103・113系電車等と同様、普通・快速列車には独特の丸ゴシック書体で「奈良-湊町」「奈良-京都」「王寺-和歌山」などと運転区間を表示するのが一般的でした(サボは方向幕機器のないキハ10・20系以外では基本的に使用せず)。

問題は急行型のキハ58系。

普通列車専門の亀山・伊勢区所属の分は、キハ35系等と共通の幕を使用していました。「亀山-奈良」「貴生川-信楽」「松阪-伊勢奥津」「亀山-鳥羽」「亀山-新宮」などのコマがよく使われた模様です。亀山のキハ58系といえば、当初は広島・米子地区から転属の初期タイプが多く、特に元・広島局所属の車両には、なぜか車体中央にサボ受けが増設されたようです(その後、和歌山・奈良から大量に転入)。

急行運用のある和歌山・奈良所属分は、行先の入った天鉄仕様とは違うもの、すなわち種別のみの全国標準タイプだったようです。基本的にキハ35系ほか一般型気動車とは厳格に使い分けていたが、キハ58系とキハ35系との混結も珍しくなく、特に奈良・和歌山線電化直前頃には混結編成も多かったようです。

急行編成が間合い等で普通列車に入るときは、方向幕は白幕、サボ使用で運用されました(キハ35系ほか一般型編成と連結する場合も同様)。