中国山地の長大ローカル線・芸備線には、かつてさまざまな急行列車が運行されていました。その代表的なものといえば、広島と松江・米子方面を木次線経由で結ぶ陰陽連絡の【ちどり】でしょう。【ちどり】は夜行便まで運転されたこともあります。晩年は広島-三次間の短距離急行【みよし】に絞られ、キハ58系使用の最後の急行列車として注目を集めるが、2007年快速に格下げされました。 

ここでは、芸備線の急行列車でも地味だった【たいしゃく】【やまのゆ】について紹介したいと思います。

実は【たいしゃく】【やまのゆ】こそ、芸備線を全線(広島-新見間)走破する急行列車でした。【たいしゃく】の由来は広島県庄原市東城町の名勝・帝釈峡。現在では超閑散区間となった備後落合-新見間の沿線を代表する花形列車でした。【やまのゆ】は新見からさらに姫新線に乗り入れ、津山まで行きました。

【たいしゃく】【やまのゆ】は、【ちどり】とちがってグリーン車(キロ28)無しのローカル急行でした。【やまのゆ】はかなりの長距離を走るのに、グリーン車無しは勿体無いような気もしますね(もともと需要が少なくキハ2両で間に合うためでしょう)。【やまのゆ】が設定されたのは1972~80年の短命でした。【たいしゃく】もかつては新見から伯備線回りで岡山まで直通していたようですが、末期は備後落合以東普通列車として運転されました。

1984年2月ダイヤ改正より、芸備線の急行列車は全てグリーン車無しに。【ちどり】も木次線直通は1990年に廃止、備後落合止まりとなるが、なぜか名前だけそのまま残りました。そのうち、三次以東は普通列車となって、2002年以降は【みよし】に統合吸収。もちろん、【たいしゃく】の名称も消失しました。

現在、備後落合駅を越えて直通する列車は1本もありません。この駅は芸備線・木次線の結集する拠点駅。JR西日本岡山・広島・米子3支社境界が設置されており、芸備線三次方面・同新見方面・木次線の3方から色とりどりのキハ120が1日数本発着する程度の寂しいターミナルです。夜行【ちどり】がこの駅でスイッチバックして賑わっていた時代など、とうに昔の話。駅構内の「おでんうどん」も名物だったが、今も近くのドライブイン内で味わえるそうです。